ハナコ
21:28
ハナコ
21:14
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畠の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
ハナコ
21:07
初恋。 島崎藤村
ハナコ
20:04
明るい方へ
明るい方へ
明るい方へ。
一つの葉でも
陽のもるとこへ。
やぶかげの草は。
明るい方へ
明るい方へ。
はねはこげよと
灯のあるとこへ。
夜とぶ虫は。
明るい方へ
明るい方へ。
一分もひろく
日のさすとこへ。
都会(まち)に住む子らは。
ハナコ
20:04
明るい方へ
ハナコ
20:01
このみち
このみちのさきには、
大きな森があろうよ。
ひとりぼっちの榎(えのき)よ、
このみちをゆこうよ。
このみちのさきには、
大きな海があろうよ。
はす池のかえろうよ、
このみちをゆこうよ。
このみちのさきには、
大きな都があろうよ。
さびしそうなかかしよ、
このみちを行こうよ。
このみちのさきには、
なにかなにかあろうよ。
みんなでみんなで行こうよ、
このみちをゆこうよ。
ハナコ
19:59
日の光
おてんと様のお使いが
そろって空をたちました。
みちで出会ったみなみ風、
(何しに、どこへ。)とききました。
ひとりは答えていいました。
(この「明るさ」を地にまくの、
みんながお仕事できるよう。)
ひとりはさもさもうれしそう。
(わたしはお花をさかせるの、
世界をたのしくするために。)
ひとりはやさしく、おとなしく、
(わたしはきよいたましいの、
のぼるそり橋かけるのよ。)
のこったひとりはさみしそう。
(わたしは「かげ」をつくるため、
やっぱり一しょにまいります。)
ハナコ
19:58
雪
だれも知らない野のはてで
青い小鳥が死にました
さむいさむいくれがたに
そのなきがらをうめよとて
お空は雪をまきました
ふかくふかく音もなく
人は知らねど人里の
家もおともにたちました
しろいしろいかつぎ着て
やがてほのぼのあくる朝
空はみごとに晴れました
あおくあおくうつくしく
小さいきれいなたましいの
神さまのお国へゆくみちを
ひろくひろくあけようと
ハナコ
19:57
(削除されました)
ハナコ
19:55
花のたましい
ちったお花のたましいは、
みほとけさまの花ぞのに、
ひとつのこらずうまれるの。
だって、お花はやさしくて、
おてんとさまがよぶときに、
ぱっとひらいて、ほほえんで、
ちょうちょにあまいみつをやり、
人にゃにおいをみなくれて、
風がおいでとよぶときに、
やはりすなおについてゆき、
なきがらさえも、ままごとの
ごはんになってくれるから。
ハナコ
19:54
ぬかるみ
このうらまちの
ぬかるみに、
青いお空が
ありました。
とおく、とおく、
うつくしく、
すんだお空が
ありました。
このうらまちの
ぬかるみは、
深いお空で
ありました。
ハナコ
19:53
しょうじ
おへやのしょうじは、ビルディング。
しろいきれいな石づくり、
空までとどく十二階、
お部屋の数は四十八。
一つのへやにはえがいて、
あとのおへやはみんな空(から)。
四十七間のへやべやへ、
だれがはいってくるのやら。
ひとつひらいたあのまどを、
どんな子どもがのぞくやら。
まどはいつだか、すねたとき、
指でわたしがあけたまど。
ひとり日ながにながめてりゃ、
そこからみえる青空が、
ちらりとかげになりました。
ハナコ
19:50
美しい町
ふと思いだす、あの町の、
川のほとりの、赤い屋根、
そうして、青い大川の、
水の上には、白いほが、
しずかに、しずかに動いてた。
そうして、川岸(かし)の草の上、
わかい、絵かきのおじさんが、
ぼんやり、水をみつめてた。
そうして、わたしは何してた。
思いだせぬとおもったら、
それは、だれかにかりていた、
ご本のさし絵でありました。
ハナコ
19:48
すなの王国
わたしはいま
すなのお国の王様です。
お山と、谷と、野原と、川を、
思うとおりにかえてゆきます。
おとぎばなしの王様だって
自分のお国のお山や川を、
こんなにかえはしないでしょう。
わたしはいま
ほんとにえらい王様です。
ハナコ
19:46
こころ
おかあさまは
おとなで大きいけれど、
おかあさまの
おこころはちいさい。
だって、おかあさまはいいました、
ちいさいわたしでいっぱいだって。
わたしは子どもで
ちいさいけれど、
ちいさいわたしの
こころは大きい。
だって、大きいおかあさまで、
まだいっぱいにならないで、
いろんなことをおもうから。
ハナコ
19:45
こだまでしょうか
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「ばか」っていうと
「ばか」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、だれでも。
ハナコ
19:43
だれがほんとを
だれがほんとをいうでしょう、
わたしのことを、わたしに。
よそのおばさんはほめたけど、
なんだかすこうしわらってた。
だれがほんとをいうでしょう、
花にきいたら首ふった。
それもそのはず、花たちは、
みんな、あんなにきれいだもの。
だれがほんとをいうでしょう、
小鳥にきいたらにげちゃった。
きっといけないことなのよ、
だから、いわずにとんだのよ。
だれがほんとをいうでしょう、
かあさんにきくのは、おかしいし、
(わたしは、かわいい、いい子なの、
それとも、おかしなおかおなの。)
だれがほんとをいうでしょう、
わたしのことを、わたしに。
ハナコ
19:40
ゆめとうつつ
ゆめがほんとでほんとがゆめなら、
よかろうな。
ゆめじゃなんにも決まってないから、
よかろうな。
ひるまの次は、夜だってことも、
わたしが王女でないってことも、
お月さんは手ではとれないってことも、
ゆりのなかへははいれないってことも、
時計のはりは右へゆくってことも、
死んだ人たちゃいないってことも。
ほんとになんにも決まってないから、
よかろうな。
ときどきほんとをゆめにみたなら、
よかろうな。
ハナコ
19:38
こよみと時計
こよみがあるから
こよみをわすれて
こよみをながめちゃ、
四月だというよ。
こよみがなくても
こよみを知ってて
りこうな花は
四月にさくよ。
時計があるから
時計をわすれて
時計をながめちゃ、
四時だというよ。
時計がなくても
時間を知ってて
りこうなとりは
四時にはなくよ。
ハナコ
19:36
なしのしん
なしのしんはすてるもの、だから
しんまで食べる子は、けちんぼよ。
なしのしんはすてるもの、だから
そこらへほうる子、ずるい子よ。
なしのしんはすてるもの、だから
ごみばこへ入れる子、おりこうよ。
そこらへすてたなしのしん。
ありがやんやら、ひいてゆく。
「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」
ごみばこへいれたなしのしん、
ごみ取りじいさん、取りに来て、
だまってごろごろひいてゆく。